日本人は「美術展」が大好きだ。イギリスの専門誌「The Art Newspaper」が毎年発表する「世界の美術展来場者ランキング」でも、日本の美術展は近年、上位を独占しつづけている。ルノワールやカラヴァッジョ、ゴッホ、ゴーギャンといった西洋絵画の巨匠に加え、長く異端視されていた日本の天才絵師・伊藤若冲が大ブームになったのは記憶に新しい。東京都美術館の「生誕300年記念 若冲展」では一日平均入場者数が約1万4千人と、同館過去最高を記録した。完成したときから劣化が始まるといわれる絵画。こうした名作をいま目にすることができるのは、それが「絵画修復士」の手で幾度も手当てを施され、大切に守られてきたからである。